平成28年決算特別委員会 意見開陳原稿 公明党 辻 薫 

平成28年10月25日発言

公明党の辻薫でございます。私は、公明党豊島区議団を代表致しまして、平成27年度一般会計決算並びに、国民健康保険事業会計、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計の3特別会計決算を認定することに、賛成する立場から意見開陳を致します。

初めに、円滑公平な運営に努められました高橋佳代子委員長並びに磯一昭副委員長の労に、感謝を申し上げます。また、理事者の皆様には、資料要求をはじめ事前調査に快く応じて頂き、私どもの質問に対しその意を酌まれ、丁寧にご答弁頂きましたことに心から御礼を申し上げます。

さて、平成27年度決算に当たり私ども公明党は、1. 区民の目線に立った行政運営がなされているか、2. 豊島区を取り巻く、時代の変化に的確に対応した事業展開となっているか、3. 安定的・持続可能な財政運営がなされているか、4. セーフコミュニティ国際認証都市としての安全・安心の取り組みがなされているか、を主眼に、慎重かつ厳正に審査に臨みました。

 先ずは、平成27年度予算について、簡単に確認の意味も含めて触れさせて頂きます。予算編成時の日本経済は、緩やかな景気回復基調が続いているものの、消費税増税後の駆け込み需要の長期化や海外景気の下振れなど、景気を下押しするリスクも指摘され、先行きについては不透明な状態でした。また、平成27年度からは法人住民税の一部国税化の影響が生じることで、特別区財政調整交付金の大幅な減収が見込まれる状況でした。

こうした状況のもと編成された平成27年度一般会計当初予算規模は、1,113億96百万円、対前年度比3.1%のプラス、特別会計を含めた総財政規模は、1,724億98百万円、6.2%のプラスであり、2年連続で4会計全ての財政規模が過去最大でありました。

27年度予算の特徴として区は、「持続発展都市」実現予算、「新庁舎」開設準備予算とされていました。加えて、私ども会派が要望しておりました待機児童ゼロを目指した子育て支援施策の大幅な拡充など、区民生活の柱である福祉と教育に力点を置いた予算であることを高く評価しておりました。

 そして、平成27年度決算についてですが、一般会計の決算額としては、歳入が前年度比5.8%増の1,400億40百万円で、歳出は5.5%増の1,367億20百万円となり、歳入、歳出決算額とも最近10年間では最も高い額であり、平成26年度決算額を上回る過去最高額となりました。

 規模拡大の最大の要因は、旧庁舎跡地一括前払い地代191億円の収入と同額の歳出需要があったこと、また、庁舎等建設基金の廃止に伴い、運用金償還のための82億円が歳入・歳出に計上されたことによります。

また、歳入では特別区民税が課税人口の大幅な伸びや収納率の向上などにより、当初見込みを7億5千万円を超える271億円となったことも規模拡大の要因の一つとなります。経常収支比率は、経常一般財源収入が伸びたことなどから、前年度からさらに1.4ポイント良化して77.4%となり、本区の財政構造はその体質が一層改善されました。

 ここからは、本委員会での質疑について取り上げます。総括質疑では、先ず、区が平成27年度決算の特徴の一つに掲げた「消滅可能性都市から持続発展都市への転換」を進める取り組みについて、具体的な事業と決算額について伺いました。それによると、「としまF1会議」からの提案による「子育てナビゲーターの配置」や「サクラーヌ・ビズ」など11事業の決算額は約9,100万円でしたが、その後、補正予算によって「ゆりかご・としま事業」を実施するなど、着々と「女性にやさしいまちづくり」として形になっていることを評価致します。

今後の財政運営については、特に、今後5年間の投資的経費が概算で969億円となり、学校改築、造幣局跡地公園整備、新ホール、新区民センターなどが主なものであることを確認しました。また、財源の内訳は、一般財源が266億円、特定財源が703億円で、特定財源のうち388億円は特別区債を想定しているとのことでした。

そこで心配される将来負担については、財政調整基金等の貯金を活用して区債の発行を抑制できると考えており、そのためには、機会を見て基金の積み増しを図ると同時に、計画的な基金の積み立て、及び取り崩しを検討していくとの見解が示されました。

さらに、安定的な財政運営の継続のために、財政調整基金を可能な限り取り崩しをせずに温存していくべきとの考えに対しては、区としては最低でも120億円以上の基金残高を確保していくとの認識を伺いました。

総括質疑の最後に、高野区長からもご答弁を頂きましたが、今後、財政状況の推移を見極めつつ、起債計画とそれに伴う償還計画、基金計画をしっかりと組み込んだ投資事業の計画を立てていくことを改めてお願い申し上げます。

 

以下は、款別ごとに、具体的な提案も含め、特筆すべきことを述べさせて頂きます。

 最初に、議会費・総務費について申し上げます。

●新しい議会施設の活用については、書画カメラや対面方式の本会議一般質問形態など、新しく税金投入された「より開かれた議会システム」については、早急に採用すべきと考えます。

●議会の管外視察経費については、23区では平均350万円の予算を計上しており、管外視察を通して先進自治体の調査研究を重ねています。豊島区は3年前から防災震災対策調査特別委員会が管外視察を行っていますが、費用としては50万円ほどです。全委員会での管外視察の議論を期待します。

 ●消防団への区関係機関の支援に関して、約50年前のオリンピック時には、150万人いた消防団員が、現在では80万人に減少し、高齢化も進んでいます。東日本大震災や4月の熊本地震でも地域を熟知している消防団の活躍が頼もしく映像で流れました。首都直下地震を想定した本区の防災でも消防団の活躍に期待が高まっています。

豊島消防団と池袋消防団の分団施設に大きな差があることをかねてから指摘してきましたが、解決に向けた努力を要望します。毎年のポンプ操法大会に向けた訓練では、区内の小中学校のご理解を頂いていることに感謝しています。更なる支援をお願い致します。

●防災対策費のうち、罹災証明発行システムに使用するスキャナー機については、現在の3台では充分ではないことから、他自治体からの支援として、防災協定都市との支援メニューに入れることを提案します。

また、危機管理監のもと物流体制の見直しが行われ、防災協定都市間のパッケージ支援の構築に取り組まれているところですが、今後は緊急救護所から後方病院への人の移動方法についても検討されるよう要望致します。

さらに、災害時の通電火災を防止する耐震ブレカーの設置助成については、先ずは木造密集地域からはじめ、将来的には希望する世帯への拡充を望みます。

●窓口サービスレベルアップ事業については、平成23年度のいわゆる覆面調査の不本意な結果を受けて、新庁舎移転後に再度調査を実施するよう要望しておりました。そして、平成27年度に実施された調査結果については、全体として接遇レベルが上がったものの、職員の対応レベルに差があったとのことでした。今後とも職員が主体的に接遇向上に取り組む仕組みづくりの検討をお願い致します。

●エリアWIFIは、増加する訪日外国人への利便性向上のほか、防災面での活用などに大変に有効です。在住外国人や若者からも整備の推進が期待されています。公共施設への整備と民間との協働により区内全域での積極的な整備を望みます。

次に、福祉費・衛生費についてです。

●待機児童対策については、過去3年間の大幅な保育枠の増により、今年の待機児童数は105名まで減少し、23区では少ないほうから5番目と伺い、本区の先駆的な取り組みを高く評価致します。更なる対策として、設置基準の緩和、3歳からの受け入れ枠不足、歳児とエリアのミスマッチについて伺いましたが、いずれも着実に取り組まれていることを確認させて頂きました。

さらに、居宅訪問型保育事業に待機児童を加えるなど、平成29年度末までに待機児童ゼロを目指し、引き続きのご尽力をお願い申し上げます。
●児童虐待については、相談受理件数が増加傾向にあることから、現状を把握して、知識と経験豊富な専門の職員育成とともに充分な職員体制を整備することを要望します。

また、児童相談所の移管については、一時保護や保護者への指導等を状況に応じて迅速に行うためにも早期実現に向けて取り組むようお願いいたします。さらに、予防という観点から親の子育て力向上の取り組みも要望致します。

●認知症対策としては、地域でサポーター養成事業を実施していますが、23区では22番目と低いため、コーディネーター、キャラバンメイト養成の充実をはかり高齢者が長く地域で住み続けられる環境作りを要望致します。

●成年後見人制度の活用状況については、申し立て手続きが複雑で、分かりにくいとの声が聞かれます。区として更なるPRを望みます。また、社会貢献型後見人の養成は、東京都が終了して、区に移管しているため、更なる養成を要望致します。

 ●歯と口腔の健康づくりについては、「妊産婦歯科健康診査事業」と「歯周疾患健診事業」に関して、妊娠中に歯周病になると早産や低体重児の危険性が高く、また、歯周病の人は糖尿病が重症化しやすいことから、区民への更なる周知とともに、受診率の向上の取り組みをお願い致します。

●がん対策については、検診勧奨の効果もあり、受診率が全体で19.6%と年々増加しています。胃がんリスク検診は、ピロリ菌、ABC血液検査の対象年齢の拡充に加えて、中学生への尿検査導入や、健康診断における内視鏡検診の導入推進を要望します。

 次に、環境清掃費・都市整備費・土木費についてです。

●区内の公園や区道で、ボランティアの方々が清掃や整備に尽力して下さっています。献身的な活動に最大の敬意を払い、血の通った行政を要望致します。

一例として目白三丁目のJRに沿った区道の活動を紹介しました。このような真心の行為を行政としてできるだけ掌握し、必要な支援を要望致します。

●食品ロス削減の対策を要望してきましたが、最新号の広報としまに食品ロス削減の記事を大きく取り上げて頂き大いに評価致します。
 11月に開催する「食品ロス削減の講座」などのレシピをまとめ、パンフレットなどとして活用することを望みます。
 「ごちそうとぼうさい」という「食品ロス削減」と「防災」の二つのテーマを掛け合わせた新しいイベントとして、防災用の非常食品の美味しい食べ方をアピールするなどの取り組み推進を要望します。また、所沢市などで進んでいる「食品ロス削減協力店」登録制度などの実施も要望します。
 今後は、衛生部門と環境部門など関係機関が連携を取って全庁的な会議体を通して食品ロス削減の取り組みのさらなる推進を要望します。

●高齢者等の入居支援事業経費については、執行率が2.0%で、事務事業評価でも改善見直しが必要とされています。家主の約7割が高齢者の入居に拒否感がる理由として、家賃の未払いに限らず、死亡時の退去費用負担などが挙げられています。こうした費用保証を含め新たな居住支援制度の創設と共に、入居後の継続支援を行うなど高齢になっても安心して暮らすことのできるシステムづくりを要望致します。
●安心住まい提供事業については、全物件の3分の1が利用されていない理由としてバリアフリー化がされていない物件が多いためと伺いました。

住宅環境が改善されない物件の契約解除も検討し、また、安心住まいの偏在を解消しながら稼働率を高め、平成30年度の目標である200戸を確保することを望みます。

●子育てファミリー世帯への家賃助成事業については、執行率は下がっているものの助成件数、予算額とも増加しており、区民の需要に一定程度応えているものと理解しています。

新たな取り組みとして、若い世代の区内定住化を図るために、国の施策である「結婚新生活支援事業」を活用することを要望致します。

●橋梁の長寿命化計画の着実な推進により、大塚地域では空蝉橋の歩道が広く綺麗になり大変好評です。また、計画中の西巣鴨橋の架け替え工事では、通学路の安全対策など地域区民の要望を丁寧にお聞きして、バリアフリーの観点、無電柱化など100年安心の橋梁整備を望みます。

●公園の長寿命化は、平成26~35年に向けた整備計画の着実な推進とともに、遊具の安全性にも注視した適切な整備を要望致します。F1会議による提言で、長崎公園のトイレ改修が実施されました。引き続き、子育て世代が利用しやすい公園施設の整備推進を望みます。

●木造密集地域の不燃化事業については、安全安心の街づくりとして、大変に大きなチャンスの事業です。東京都と連携してしっかり取り組むよう要望します。地域外の地主へのアプローチを徹底することも要望致します。

他区と比較すると建て替え促進や老朽建物除却はそれぞれ1位、4位と高位ですが、地元住民としては、一向に進んでいないとの声が多くあります、隣家との難しい交渉を丁寧に進めて、更なる安全・安心まちづくりを望みます。

●区道の整備事業については、債務負担行為と工期の年度跨ぎを組み合わせることにより工事事業者の発注時期の平準化が行われていることを評価致します。

一方、関係諸機関との事前調査が充分されていない課題が指摘されています。改善へ向けて取り組むようお願い致します。
 路面下陥没危険個所調査については、区道の約2割が実施され、2次調査により34か所の空洞が発見されました。空洞の発生原因から原因者に調査費用を負担して頂くことを検討願います。陥没の未然防止により、日常生活はもとより、災害時の輸送道路を確保するためにも路面下陥没危険個所調査を計画的に実施することを要望します。

 次に、文化商工費・教育費です。

●生涯学習については、様々な区民ニーズへの対応に向けて出来る限り早期のインターネット活用によるデータベース構築を含めた生涯学習のワンストップサービス化を実現できるよう要望致します。

●利用者が年々増加している区内体育施設の充実については、競技場の利用料値下げや、夜間利用のニーズにも対応するなど検討することを要望します。
●車いすバスケット大会などの参加者への駐車場確保など、国際アートカルチャー都市として、障がい者スポーツ支援に一層取り組むことを望みます。

 ●不登校対策については、未然防止の取り組みが大事であり、本区においてはハイパーQUと不登校対策会議を実施していることを評価致します。併せて家庭での取り組みが大事であることから保護者への啓発にも取り組むよう要望致します。

不登校後の対策としては、適用指導教室の対応とタブレットパソコンによる学習支援が効果を上げていることがわかりました。また、スクールソーシャルワーカーの役割は重要であり、さらなる拡充を要望致します。

●小中学校の学力向上として取り組んでいる補習チューター事業については、大学生や税理士会など地域人材の活用、ICTの活用など高く評価します。

教員の負担を極力なくしてさらに推進することを望みます。

●副校長2名制度については、有効性を活かして児童生徒のための組織つくりを望みます。

●長野県蓼科の小学6年生の林間学校を日光に変更することを要望します。それに関連した山中湖秀山荘の今後の利用など充実した内容になるよう望みます。
●ICTを活用した教育については、27年度はタブレットパソコンに変更し、屋外での画像、取材が可能になって活用が広がり、情報教育の先駆的な取り組みを評価します。ICT教育の先生方の実力アップのためにICサポーターが活躍し、教材つくりなど、ソフト面の支援も充実するなど更なる取り組みを望みます。
また、学校業務改善のための公務支援システムの先駆的な活用を評価します。
●SNSによるいじめ、自殺が社会問題化している中、便利な道具という面と、同時に人間の生命の大切さを教える、メディアリテラシの充実を要望します。また、保護者に向けた携帯電話などの功罪をしっかり認識する取り組を要望します。

 次に、歳入についてです。

●収納対策については、平成27年度に収納推進本部のもと「収納推進担当課長」と民間による「納付案内センター」を設置したことにより、収納アップに大いに効果が出たことを評価します。

4公金の収納を共同で催告を実施し、電話、訪問など細かく対応し、先ずは、期限内に納付頂ける体制づくりを望みます。
また、コンビニ収納、モバイルレジ、クレジット収納など、支払う側がより便利に支払うことが出来る環境作りを要望致します。

 次に、3特別会計についてです。

●国民健康保険事業会計については、医療費の抑制策として、ジェネリック医薬品の比率が52%まで上昇し、効果があったことを評価します。
 糖尿病など重症化の前に医療機関を受診する対策強化や、レセプト分析・データヘルスを有効活用して医療費の抑制努力を要望します。
●後期高齢者医療事業会計については、平成29年に原則本則に戻す方針について、国の動向を注視しながら持続可能な高齢者の医療制度確立を区民の皆様にご理解頂けるように周知、広報を要望致します。

●介護保険事業会計については、地域包括ケアシステム構築に欠かせない「定期巡回・随時対応」の推進により、区民に介護の不安を持たせない取り組みと共に、介護予防の充実を図るよう要望致します。

 以上、縷々意見を述べさせて頂きましたが、冒頭に述べました私どもの審査上の4つの指標から申し上げますと、1番目の「区民目線にたった行政運営」と、4番目の「セーフコミュニティ国際認証都市としての安全・安心の取り組み」については、款別審査において個別の事業を通して確認することが出来ました。

また、2番目の「時代の変化に的確に対応した事業展開」との視点では、総括質疑の冒頭で取り上げましたが、消滅可能性都市との指摘を受けて、持続発展都市への転換を図るための事業を積極的に展開し、女性にやさしいまちづくりとして形となってきていることを確認させて頂きました。

 もう一つの指標である「安定的・持続可能な財政運営」についても、総括質疑のやりとりの中で、今後の投資事業についてお願いも含めて確認させて頂きました。また、総括質疑の最後に、平成29年度決算より新公会計制度による財政の見える化が実施されることから、会計課に留まらず全庁挙げての取り組みで職員一人一人の意識改革がなされ、一層安定した財政運営に結びついていくものと期待を申し上げさせて頂きました。

 最後に、今後とも安定的で持続可能な身の丈に合った財政運営にご努力頂くとともに、一方で、必要とする区民に対して、必要なサービスが的確に提供されますよう、ご尽力頂くことをお願い申し上げ、平成27年度決算における認定に際し、意見開陳と致します。

ご清聴、ありがとうございました。

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