平成21年決算委員会公明党意見開陳 辻 薫原稿

2009・H21年10月22日

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必要な人に、必要なサービスを提供

 私は、公明党豊島区議団を代表致しまして、平成20年度一般会計決算並びに国民健康保険事業会計、老人保健医療会計、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計、従前居住者対策会計の5特別会計決算を認定することに賛成する立場から意見開陳を致します。
最初に、理事者の皆様には、資料要求を初め、事前調査にご協力頂き、また、意を尽くせぬ私どもの質問に対し、丁寧にご答弁頂きましたことに心から御礼を申し上げます。
平成20年度の決算に当たり私ども公明党は、区から提出された決算資料、監査委員の意見書などをもとに、1、区民の目線に立った行政運営がなされているか。2、時代の変化に的確に対応した事業展開となっているか。3、我が党の予算要望に応えられたか。4.持続可能な財政運営がなされているかを主眼に、慎重かつ厳正に審査に臨みました。
平成20年度は、原油価格の高騰、アメリカ経済の減速や、金融市場の低迷などによる先行き不透明感はあるものの、国内民間需要に支えられた景気が今後も持続すると見込まれていました。しかし、一方では「東京富裕論」を背景とした税収の格差是正問題や道路特定財源廃止の議論が地方財政にも少なからず影響を及ぼす問題となるため、その後の動向を注視する必要があるとされていました。

こうした中での平成20年度予算は、一般会計の予算規模では前年より微増し、高野区長は、文化と品格を誇れる価値あるまちづくりと環境に配慮した都市の創造を目指して、「文化」「健康」「都市再生」「環境」に重点的に取り組むという方針を示す中で、編成されたものでした。

重点政策、基本政策については、50のプロジェクトを選定し、182の新規・拡充事業に取り組む積極型予算であると同時に、3年連続して特別な財源措置を講ずることなく、起債への依存度も抑制した堅実な予算編成がなされました。

こうして迎えた20年度は、環境省の「環境モデル都市」への挑戦に始まり、その後のグリーンとしま再生プロジェクトへと展開するまさに環境都市づくり元年となりました。また、文化芸術創造都市として文化庁長官表彰を受賞したことは、高野区長が就任以来区民とともに取り組んでこられた、創造力を内包する文化芸術の振興を図り、もって商工業の伸展を促し、街の魅力と活力を高めるという文化政策が国においても認められたものと高く評価するものであります。

一般会計決算額としては、歳入が965億98万円で、歳出が918億1,528万円であり、前年度の決算額と比較すると、歳入が12億5,675万円で、率にして1.3%の増であり、歳出が2億9,195万円で、率にして0.3%の増となり、歳入歳出ともに前年に引き続きプラスとなりました。
歳入増については、土地開発公社分割償還金の繰り上げ償還を行う財源として財政調整基金繰入金が37億円の増となったことと、新中央図書館建設事業が終了したことなどにより特別区債が30億円減少したことなどの差し引きによるものでした。

土地開発公社の繰り上償還については、総括質疑の中で、「これは、将来負担の軽減を目的としており、早期返済による利息軽減分を区民サービスに振り向けたい」との高野区長の決意を伺うことが出来ました。今後の繰り上げ償還にあたっては、行政サービスの水準を低下させないことが前提であることを確認致しました。

また、執行率についてですが、とりわけ重点政策・基本政策の50のプロジェクトについては、67.4%、新規事業は、79.9%に留まっておりました。執行率の低かった原因は、様々だと思いますが、厳しい経済状況においては、企画段階からより一層綿密な取り組みにより執行率向上を図るべきと提案申し上げます。

以下、款別ごとに、要望を含め、特筆すべきことを述べさせて頂きます。

最初に、総務費です。本庁舎の窓口業務についてですが、開庁時間内に来庁

が困難な区民へのサービス向上のため、休日、夜間窓口業務の拡充をお願いするとともに、全ての窓口業務において、「ホスピタリティあふれる接客」をキーワードに新庁舎整備に向かわれることを期待するところであります。

区のホームページについては、8年ぶりに全面リニューアルされ、アクセス数も上昇し、利用しやすいものになったと評価しております。一方今回の質疑の中で、あるコンテンツの内容に重要事項の変更があったにもかかわらず、更新作業がなされておらず、区民に対して不利益の期間があったことが報告されました。早急に、掲載内容についてのチェック体制の強化に取り組まれますよう要望致します。

また、広報としまについては、誌面の刷新、発行回数の増加により、区民への情報提供の充実が図られ大いに評価するものです。今後は、広報としまをタイムリーに入手出来ない方々のために、携帯電話を活用した広報情報発信への検討もお願いしたところであります。

池袋駅周辺混乱防止対策訓練については、東京都との共同事業であったこともあり大規模なものとなりました。今後は区単独での事業となりますが、65、000名という帰宅困難者の待機場所確保など困難な課題解決のため、事業者主体の取組として協議会での活発な議論と訓練の継続実施を要望致します。

次に、福祉費、衛生費について申し上げます。

先ず、以前より要望しております乳幼児の細菌性髄膜炎予防に有効なヒブワクチン接種の公費助成については、感染者の4人に一人に後遺症が残ることから今回改めてお願いした次第です。また、新型インフルエンザの予防接種については、現在国において優先接種対象者への接種回数の調整を行っておりますが、公費助成の実施へ向けて早急に検討して頂くよう強く要望致します。

生活福祉課の人員に関しては、効果的な自立支援に取り組むためにも、保護受給者の生活実態を常時把握できる体制を整備されますよう、また、生活福祉課の執務スペースなど職場環境の改善も図られるよう要望致します。

子育て支援策としては、会派より要望しておりました施設提供型保育ママ事業の実施を高く評価するとともに、今後の保育園の待機児童対策の一つとして池袋本町防災広場内設置の仮園舎の活用を提案致します。また、子育て支援ガイドについては、区民に大変に好評を頂いております。同時に、本区における子育て支援の充実ぶりが区民の皆様に認識されたことは高く評価するところであります。今後は、各種制度変更に伴う内容の更新に対応するためにも、ホームページへの掲載を要望致します。

地域密着型サービス整備事業については、計画通りに進まない状況ですが、先ずは、老老介護の解消策の一つとして、また、地域の福祉拠点としての小規模多機能型施設の早急なる整備をお願い致します。

発達障害児支援モデル事業への取り組みについては、内外ともに多くの方々のご尽力のたまものと感謝申し上げます。事業の成果を今後の発達支援に活用しながら、ライフステージに応じた一貫した支援体制の一層の構築をお願いするものであります。また、区民に対して発達障がいへの理解を深めるための取り組みも要望致します。次に、清掃環境費、都市整備費、土木費でありますが、最初に、新たな地域公共交通システムの充実を図っていくための重点政策の一つがコミュニティバス導入計画の策定です。一部地域のバス既存道路を走行するのではなく、区内全域をカバーできるコミュニティタクシーの方が、財政上からも区民のニーズにも適合することから、早急に見直しを行い、実施するよう要望致します。

住み慣れたまちで安心して住み続けたいとの多くの区民の声を受けて、高齢者世帯等住み替え家賃助成は、平成21年度新規事業である子育てファミリー世帯への家賃助成とともに利用者のニーズに即した対象要件の緩和などで利用しやすい施策として頂きたく要望致します。

また、安心して住み継がれる住宅市街地づくりの重点政策の一つである居住環境総合整備事業については、災害に強いまちづくりに直結する事業であり、老朽住宅建て替えの促進と合わせてさらなる取り組みをお願いするものです。

今後の自転車駐車場の整備については、監査員からの指摘もありましたが、歩道上のコイン式駐車場などコスト率の良いものを増やし、一般の駐輪場については、時期を見て存廃も含め検討が必要であると考えます。

次に、文化商工費、教育費についてですが、区民の就労支援に対し、相談窓口の設置検討も含め、求職と募集の的確な情報集約を行い、丁寧かつ効果的に取り組み、継続的な支援が行えるよう要望致します。

9月1日に消費者庁が設置されました。専門相談員がこれまで以上に安心して働ける環境整備とともに、今後とも区民目線に沿った消費者行政の推進をお願い致します。

英語教育の推進については、小学校で芽生えた英語は楽しいという気持ちを中学校でも生かせるよう効果的な学習を期待致します。また、教育現場に、現在の、また将来の失敗や挫折から立ち直ることのできる、真に生きる力を養うために外部人材の有効活用に全力を挙げて、取り組むことを要望致します。

学校のアレルギー対策についいては、教育委員会の取り組みによりまして、食物アレルギー児童・生徒に対するエピペン代理注射が可能となりました。早急に学校現場における具体的な取り組みを要望致します。

一方、歳入につきましては、特別区民税及び国民健康保険料における現年度分の収納強化策として、コールセンターによる電話催告等が効果的に行われ、納付率の向上につながっております。また、本年4月より後期高齢者医療保険料も加えてコンビニエンスストアでの収納が可能となりました。今後は介護保険料も加えて、さらにはクレジットカードによる納付も時代に即した制度として構築していくよう要望致します。合わせて、現下の経済不況による納付が難しくなった方の相談については、納付者の立場に立っての対応を要望致します。

最後に、特別会計のうち、介護保険事業会計について申し上げますが、区民の共感を得られる介護予防政策の展開を期待するとともに、介護保険ライブラリーなどの事業については、利用者への周知徹底を図ることを要望致します。

以上、款別ごとに意見を述べさせていただきましたが、昨年9月のリーマン・ショック以降、世界的な金融危機の深刻化、世界同時不況という環境の下、急速に景気が悪化しました。このところ持ち直しの兆しが見られるものの、当面区財政を取り巻く環境は厳しい状況が続くと予測されます。本区の財政状況は、普通会計の財政指標や財政健全化の判断比率を見ると、現状においては、適正な水準を維持しているものの特別区の平均水準を下回っております。こうしたことから、今後も引き続き徹底した行財政改革に取り組み、財政の健全化をさらに推進していくことが要望致します。

また、現在、国の補正予算の執行停止は、地方自治体に大きな影響を与えています。とりわけ、子育て応援特別手当の執行停止は、本区においても4,200名の方を対象としており、申請手続きも一部始まっていて、あてにされていた人に対して大きな混乱と失望を与える結果となりました。先ずは、政府に対し厳重なる抗議を行って頂くとともに、対象の区民については、政府の突然かつ一方的な執行停止であることを丁寧に説明することをお願いする次第です。

最後に、今後平成21年度から新たにスタートした評価制度をもとに、未来戦略推進プラン2010の策定に取り組まれると思いますが、先ずは区民目線に立っての策定を要望致します。「一は万が母」という言葉があります。「一は全ての源である。」また、「万という数字も1から始まる。」との意味ですが、大きな事業も一人の区民の視点から考えていく。それは、また多くの区民に通じていく。また、必要な人に、必要なサービスを提供してこそ有効な事業となります。

私どももまた、総力を挙げて区政への理解と行政サービスの提供に努めてまいることをお誓いし、公明党の意見開陳とさせていただきます。
ご清聴、ありがとうございました。